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ビルマ大統領インタビュー「スー・チー閣僚起用の条件」

Written By Unknown on Tuesday, April 3, 2012 | 3:03 AM

4月3日(火)17時0分配信
行動派 テイン・セインは新政権発足直後から数々の改革を実施して国際社会を驚かせているが Jason Lee-Reuters


 見せ掛けの民政移管か、ビルマの真の改革が始まるのか。テイン・セイン大統領が初めて外国メディアに語った未来

 昨年3月の民政移管と前後して、ビルマ(ミャンマー)は確かに変わりつつある。民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーが自宅軟禁を解かれ、ヒラリー・クリントン米国務長官が半世紀ぶりにビルマを訪問した。先ごろ、元本誌記者のラリー・ウェーマスが外国人記者として初めて、テイン・セイン大統領にインタビューした。

        *  *  *  *

──欧米はあなたが主導する変化を見守っている。政治犯を釈放し、4月1日の連邦議会の補欠選挙にスー・チーの出馬を認め、少数民族と停戦合意を結んだ。短い間に驚くべき変化だ。この国を変えようと思った動機は。

 現在進めている改革のプロセスは、国民から強い支持を受けている。平和と安定、そして経済発展を実現したいという人々の希望が根底にあるからだ。

 これらを実現するためには、国内の政治パートナーと良好な関係を築くことが重要だ。だからわれわれはスー・チーと対話を始めた。私は彼女と会い、2人の間に理解が生まれた。

──次のプロセスは?

 今後は透明性を大切にしたい。世界の国々と友好関係を維持していきたい。

──具体的には?

 スー・チーの率いる野党・国民民主連盟(NLD)が政党として登録され、彼女も補欠選挙に立候補する。人々が彼女に投票すれば当選して議員になり、議会は温かく迎えるはずだ。

 もう1つ強調したいのは、国内の少数民族の武装グループのことだ。何よりも彼らと信頼関係を築く必要がある。いくつかの点では既に彼らと合意に達しているものの、彼らが武装解除して合法的なグループに戻ることが必要だ。

──カレン族の反政府勢力とは実際に停戦合意を結んだ。

 この国には11の武装グループがあり、われわれはそのすべてと対話をしている。

──スー・チーが選挙で善戦したら閣僚に起用するか。

 選挙の結果次第だ。当選したら彼女は議員になる。現在の閣僚は全員が議会の承認に基づいて任命されている。彼女が議会の任命や承認を得たら、閣僚として受け入れることになる。

──アメリカとビルマの関係に期待することは。

 重要な点は3つある。1つ目は、アメリカとの対話は既に始まっているということ。クリントン米国務長官がこの国を訪問し、今日はミッチ・マコネル議員(共和党上院院内総務)の訪問を受けた。

 2つ目は、(外交関係を)大使レベルに格上げしたいということ。そして3つ目は、アメリカとEUがわれわれに経済制裁を実施していることだ。もう20年近くになる。制裁を緩和し、最終的には解除してほしい。

──クリントン長官は1月13日に、外交関係の正常化を目指して大使派遣の手続きを始めると発表した。
今のところ、大使を任命するという発表はないようだが。

 欧米諸国がわれわれに求める条件は3つ。政治犯の釈放、補欠選挙の実施、スー・チーをはじめとする人々を政治プロセスに参加させることだ。これらの条件は既に達成したと、私は確信している。欧米の側もやるべきことをやるべきだ。

 3つの条件を実行したのは、国の外から圧力を受けたからではない。この国のために必要だと思ったから、やったのだ。

──経済制裁の圧力のせいではないと?

 経済制裁の目的は政府を痛めつけることだったが、実際は国民の利益を損なった。民主主義体制への移行の手続きを実際に決めたのは、前政権だ。

──03年に発表された7段階の民政移管計画のことか。

 民主主義体制を導入できるように前政権が計画を決め、必要な段階を1つずつ実施してきた。

──今の改革はずっと以前に決まっていた計画で、段階的に進められてきたということか。

 体制を一晩で変えることはできない。一晩で変えようとして、事態を悪化させた国もある。だから7段階の計画を1つずつ進めてきた。今のわれわれは民主的な選挙で選ばれた政府だ。

──しかし閣僚の4分の1は軍人とすると定められ、実際にあなたも含めて大半が軍出身者だ。私たちの考える民主主義は、文民政権が軍を支配する。

 軍は既に政府の執行機関には関与していない。この国の発展には軍の協力が必要だから、彼らを切り捨てることはできない。

──強力な軍隊は必要だが、権力は文民の手にあるべきだというのがアメリカの考え方だ。アメリカの大統領は軍の統合参謀本部議長より権力がある。それが私たちにとっての民主主義だ。

 この国の憲法を勉強してもらいたいものだ。われわれの憲法でも、軍の最高司令官は大統領が任命する。

──アメリカはあなた方と北朝鮮の関係も懸念している。北朝鮮の支援で核開発を進めているかもしれない、とも言われている。北朝鮮との軍事関係を断つつもりはあるか。

 北朝鮮とは外交関係を結んでいるが、核開発や兵器の開発協力といった関係はない。われわれは核兵器不拡散を支持し、国連決議にも従っている。(そのような懸念は)疑惑にすぎない。

 核は保有しておらず、北朝鮮との軍事協力もない。北朝鮮はわれわれの国を支援できる状況ではなく、われわれには核開発を始める財政手段がない。

──欧米の人々に言っておきたいことは。

 われわれは民主化に向けて正しい軌道を進んでいる。後戻りはしない。現在の政権は発足から9カ月で、民主主義の経験もほんのわずかだ。100年以上も民主主義を実践してきたアメリカとは比べものにならない。

 この国で民主主義が繁栄するための条件は、主に2つある。国内の平和と安定の実現と、経済発展だ。経済を発展させて国民の生活を向上させるため、必要な手段を実施している最中だ。

 約300万人の国民が国外で働いている。貧困率は約26%。20年以上に及ぶ経済制裁のせいだ。この国で民主主義を繁栄させたければ、経済制裁を緩和して、(民主主義に)必要な活動を奨励するべきだ。

──経済を立て直して発展させたいのなら、一部の産業を民営化して外国資本を受け入れる用意はあるのか。

 外国資本は歓迎するし、規制も改正している。しかし経済制裁が緩和されなければ、外国の投資家は来ないだろう。

──しかし投資家は、法の秩序と司法の確立を求めるだろう。

 外国人がこの国に投資する際の唯一の障害は、経済制裁だ。

──62年のメディア規制法を廃止して報道の自由を認め、日刊紙の発行やメディアの民間保有を認めるつもりはあるか。

 報道の自由に関して、われわれが以前とは変わってきていることは明らかだ。国内で日刊紙が発行され、紙上で自由に意見を述べている。ただし、彼らメディアの側にも民主主義の習慣が必要だ。メディアは責任ある適切な行動を取らなければならない。報道の自由はメディアの説明責任に基づいている。


(ニューズウィーク日本版本誌2月1日号掲載 Slate特約)
 
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