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ミャンマーの夜明け

Written By Unknown on Friday, February 3, 2012 | 1:05 AM

 

 ミャンマーで651人の全政治犯が釈放された。その中にはキンニュン元首相(72)や学生活動家のミンコーナイン氏(49)も含まれていた。奇しくも枝野経産大臣の経済人ミッションの団員として、私自身もミャンマーを訪問している最中の出来事であった。テインセイン大統領と謁見した直後に政治犯の釈放が決定されたことを目の当たりにして、ミャンマーの民主化の夜明けを感じずにはいられなかった。

ミャンマーは東南アジア一の資源大国であるが、英米からの経済封鎖が続いたために軍事政権の対外開放は進まなかった。その間、民主化のシンボルであるアウンサン・スーチー氏の軟禁状況も続いた。その結果、一人当たりGDPが500米ドルという最貧国となった。GDP500ドルという水準は、北朝鮮やアフリカの最貧国に次ぐような低いレベルである。元々ビルマと呼ばれていた昔は、天然資源ばかりでなく、隣国のタイに食糧支援をするぐらいの豊かな経済力を誇り、地政学的にも重要な位置を占めていたのである。

一国の隆盛が国際政治に影響される典型的なケースであるが、軍事独裁国家というだけで世界から孤立しこれだけ長い間、経済発展が遅れた国家も珍しい。
■「止めてくれ、俺が逮捕されて監獄に入れられる」

当社では3年前からミャンマーの資源開発を始めたが、当時、アウンサン・スーチー氏の家の前で車に乗ったまま写真を撮ろうとすると、ミャンマー人の友人が「止めてくれ、俺が逮捕されて監獄に入れられる」と発狂するように叫んだので、ミャンマーの軍事体制の深刻さが理解できた。カメラマンの長井健司さんが狙撃された頃の話である。

私は、中国の資源供給の代替地としてミャンマーに狙いを定め、主に軍事政権と対立するシャン州で開発を進めた。シャン州はミャンマー東北部に位置する。特にタイとラオスと国境が接する地域は、ヘロインの原料となるケシ栽培が盛んに行われていたことから、かつては「黄金の三角地帯(ゴールデントライアングル)」と呼ばれていた。

シャン州に潜入するときには、日本人と悟られないように扮装してから国境を越えた。シャン州側に入ると、革命軍のジープが我々のランドクルーザーの前後に 1車ずつ警備にあたるという厳戒態勢だった。シャン州に入ってからは山道が続き悪路の為にトラックの横転事故に出くわした。ふと見ると向かいの峰には美しい花が咲き乱れている。同行した兵士に尋ねるとオピウムだと云う。此処が有名な山間部のケシ畑だったのである。

当社の若手社員は、実際に逮捕されたこともある。何度も現地に入り、挙動不審ということですでに目をつけられていたのだ。一歩間違えていたら、そのまま収監されて、事故死扱いになっていても何ら不思議ではなかった。

当社は、ミャンマー全土を踏破して資源の潜在力を確認してきた。銅や鉛、亜鉛、ニッケル更に錫・タングステン鉱石、アンチモン鉱石など資源埋蔵量は膨大なのだが、経済制裁の影響から、持ち出すことができずに宝の持ち腐れとなっていた。資源開発の許認可権は全て鉱山大臣の手にあったからである。

この結果起きたのは、中国への密輸である。シャン州の北部は中国とも国境を接しており、シャン州の北に位置するカチン州でも、ほとんど密輸によってレアメタル資源が、原鉱石のまま中国に流れていた。

昨年12月、ヒラリークリントン国務長官がミャンマーを訪問して以来、各国の大臣級が次々とミャンマー詣でを始めた。日本も玄葉外務大臣に続き、今回の枝野ミッションがミャンマーを訪問した。ミッションに対してミャンマーの鉱山大臣から、

「一刻も早くレアメタル資源を日本の手で開発してほしい」

との具体的な要請が出された。ある意味では、過去3年の間の我々の苦労は何だったのか? と、疑問を感じざるを得なかったが、今後はミャンマーの貴重な天然資源が日本の環境技術を生かした環境親和型の資源開発を実現したいものである。今回の訪問で感じたことは国際関係のバランスが見直され、その条件さえ揃えば恐ろしいスピードで民主化が進み、経済発展も実現するということだ。

著者:中村繁夫(アドバンスト・マテリアル・ジャパン代表取締役社長
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