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ミャンマー現地ルポ 駐在員が語る甘くない現実

Written By Unknown on Tuesday, July 24, 2012 | 5:02 AM

 ミンガラドン工業団地でストライキをする女性たち(編集部撮影)



7月24日(火)12時20分配信


■ストライキ、従業員との意思疎通、文化への理解、停電……既出企業の経験から分かること

 「日本語を喋ることができる人のなかでは、ガイドの仕事を選ぶケースが増えてきました」

 ある日本企業のヤンゴン事務所で働く女性が教えてくれた。会社で働くよりも、ガイドの方が収入は良いという。日本企業がミャンマーに殺到している影響だ。なかでも「ほぼ100%、ミンガラドン工業団地とティラワの経済特別区予定地は訪れます」と、現地のガイドさんが教えてくれた。

 過熱する一方のミャンマー詣でだが、「企業が投資を行うには、まだ課題の多い国である」との声も多い」。ミャンマーに限らず、海外に出れば事業が上手くいくというほど甘いものではない。「実態はどうなのか?」、ミャンマーに進出している企業の元を訪ねた。

■ストライキの嵐に見舞われる

 1998年に開設されたミンガラドン工業団地は、ヤンゴン市のダウンタウンから自動車で50分の場所にある。テナントは食品製造、電気電子部品製造などもあるが、最も多いのは縫製業だ。ここに縫製工場を持つマツオカコーポレーション(広島県福山市)。売上高約280億円(2012年3月期)のうち約112億円が海外。90年に中国に進出したのを皮切りに、02年にミャンマー、04年にはバングラデシュに進出した。現在では中国に7工場、ミャンマーとバングラに2工場ずつあり、国内工場は99年に閉鎖した。

 海外進出の背景について松岡典之社長はこう説明する。「当時、縫製業は日本国内では斜陽産業となり、人の確保が難しくなっていた」。一方で、中国では花形産業として捉えられていた。しかし、急速に発展する中国も「すぐに賃金などコストが上昇することが予想されたため、新天地を探す必要が出てきた」(松岡氏)。そこで選んだのがミャンマーだった。ミャンマーを選んだ理由の一つに「韓国勢が地ならししてくれていたこと」(同)がある。韓国は92年まで“世界の工場”中国と国交がなかった影響もあり、いち早くミャンマーやバングラに進出していた。

 現在ミャンマーでは、2工場で2000人の従業員を抱えている。生地などの原材料を持ち込み、加工して衣料として持ち出すCMP(Cutting Making and Packing)という形態で事業を行っている。主な製品は、スラックスパンツ、カジュアル、作業着など。

 工業団地に着いたのは14時前。メインストリートの両脇にある芝生の植え込みや木立の下で女性たちが座っているのが目に付いた。出迎えてくれたのは、現地社長の崎谷俊一氏。

 「皆さん、ランチの時間ですか?」

 「お昼には少し遅いですよ。あれは、ストライキなんです。もう15日目です」

 と、崎谷氏は教えてくれた。

 ストライキを起こしているのは、向かいにある日系企業の縫製工場だ。民主化の影響で権利意識を持ちはじめたことや、これまでなかった労働組合法が整備された影響もある。ただ、最も大きな原因は5月に公務員の給与が3万チャット(3000円)上げられたことだ。

 ミャンマーに在住して25年。日本人で最も現地に精通しているといわれる大丸興業ヤンゴン事務所長池谷修氏も「かつてこんなストライキがあったことはない」というほど、大規模に広がりをみせている。

■従業員への配慮は欠かせない

 マツオカでも、今回の騒動を受けて従業員との話し合いの場を設け、一部賃上げの要求に応えたという。現在、平均賃金は7万5000チャットほどだ。

 一口に縫製業は労働集約型産業と言われるが、生地の検反、裁断用の厚紙作成、生地の柄合わせ、裁断、縫製、検査、梱包と、人が手をかけないとできない作業が多い。安く人を使うという発想だけでは生産性も上がらないし、品質にも関わる。だからこそ、従業員への配慮は欠かせない。

 電力供給が不安定なことばかりではなく、コストの問題もあって、一部の作業場を除いてエアコンはない。そのため「『私もみんなと一緒』ということを見せないと駄目です」と崎谷氏は、社長室のエアコンを点けていない。それでも、従業員の作業効率を下げてはならないと、100万円かけて換気扇を設置した。さらには、昼食で肉料理を出す日を1日増やす、意見箱を設ける……。崎谷氏の口からは、従業員に対しての細やかな配慮の施策がいくつも出てくる。

 90年代後半から欧米はミャンマーに対する経済制裁を開始しており、進出に際してマツオカは大きなリスクをとった格好だ。ミャンマー工場の売上は中国工場の17分の1程度。まだ小さな規模だが、政治リスク、為替リスクなどに業績が左右されるなか、10年目にしてやっと利益を出すことができたという。「今後のミャンマーは市場としても大きくなってくれるはずです」と松岡氏は期待を込める。

 取材した駐在員の多くは「あまりの日本企業の過熱ぶりが心配だ」と不安を隠さない。現地で悪戦苦闘する彼らだからこそ、その言葉には重みがある。最後のフロンティア――。この言葉の裏側に潜むリスクにも、ミャンマー進出を検討する日本企業は目を向ける必要がある。

※以上の記事は、WEDGE8月号特集の第1部です。

◆WEDGE8月号特集『加熱するミャンマー詣で』
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/2073
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